私達は文化を脱ぎ捨てることはできない.

私達は文化を脱ぎ捨てることはできない.世界はインターネットでつながった.しかし地域や民族に根ざしていた文化も,「フラット化」されてきている.今こそインターネット時代における文化ということを考えなければいけない.コンピュータの役割は,人間の感情や記憶,思考をサポートする時代に移行している.今後、日本文化の背後にある文化の型や民族性を表現し,インタラクティブに文化体験できるようになり、それを心で理解するグローバルコミュニケーションが生まれるだろう.これがカルチュラルコンピューティングである.

お知らせ 国際会議 特別企画:「京都の職人・神主とのカルチュラルコンピューティング」

皆様、お知らせです。ぜひ、お越しください。
申し込みhttp://www.ai.soc.i.kyoto-u.ac.jp/culture2010/application_jp.php

第一回 文化とコンピューティング国際会議
〒606-8501 京都市左京区吉田本町
京都大学 吉田キャンパス構内 百周年時計台記念館

2010年2月23日(15:45~17:45)
特別企画:パネル「京都の職人・神主とのカルチュラルコンピューティング」(同時通訳付き)

イベント内容
日本文化のソフトウェアを推進するために、ほとんどコンピューティングの対象になって来なかった①日本の移ろいやすい気象・自然風土「もののあわれ」などの無常思想、「わび、さび」などの美意識 ②日本文化とアジア文化との関係性 ③神仏習合を根底とした文化構造 ④和歌、俳諧や能などの日本語独特の特性 ⑤日本的意匠(紋、織、色、能、歌舞伎)をとりあげ、
日本の伝統を守る京都の職人や神主がIT研究者やメディアアーティストと一緒に仕事したら,どのようなカルチュラルコンピューティングができるかを模索する。

パネリスト:
徳岡邦夫氏(京都吉兆嵐山本店三代目総料理長「2009年ミシュラン三ツ星」)
• 宇佐美 直治氏(東洋絵画書籍修復)
鎌田東二氏(京都大学心の未来センター教授・フリーランス神主)
• Prof.James K Gimzewski (UCLA 教授 ナノテクノロジー研究)
• 山崎 順平氏(唐紙:山崎商店)

コメンテーター
黒橋 禎夫氏(京都大学情報学研究科教授)
• 小山田 耕二氏(京都大学高等教育研究開発推進センター教授)
• 中津 良平(シンガポール国立大学インタラクティブメディア研究所)

司会:
• 土佐 尚子氏(メディアアーティスト・京都大学学術情報メディアセンター教授)

土佐尚子著「カルチュラルコンピューティング」NTT出版の紹介と関連研究と書籍をめぐる

思考・記憶をサポートするメディア

 「民族の危機、都市の危機、教育の危機はすべて互いに関連しあっている。その大きな危機とは、人間が文化の次元という新しい次元を発達させたことを忘れたときにおこるのだ」。この言葉は、2008年の世界経済の暴落や民主主義の危機の話ではありません。文化人類学エドワード・ホールの1966年の著書『かくれた次元』からの言葉です。

 現在、コンピュータは私たちの生活に種々の形で深く関わっています。パソコンはもとより、携帯電話や、携帯メール、ウェブ、ゲームなど私たちのライフスタイルに深くとけ込んでおり、好むと好まざるとにかかわらず、日常密接に接している道具や、メディアとなっています。コンピュータは当初は「計算する機械」でありましたが、現在では私たちの「思考・記憶をサポートするメディア」となっています。
 伝統文化とコンピュータの関係を見ると、文物の修復や歴史のシミュレーションを「計算する機械」として使用されることが多く、「思考・記憶をサポートするメディア」としては、失われていく文化をコンピュータでアーカイブ化するなどの静止画的手法止まりであり、マルチメディア化、ネットワーク化されているコンピュータの能力を十分活用しているとはいえません。現代社会は、種々の異なる文化背景を持つ人々がコミュニケーションを行うことが日常的であり、自分達自身の文化の歴史を理解したり、異なる文化を理解することが求められています。しかしながら、文化の歴史や異なる文化の理解は、本を読んだり、博物館で文物を見てその文化を理解するのが通常の方法です。だから異なる文化の理解の場合、情報を正確につかみ取ることが、なかなか困難です。
 情報工学の発達により、ネットワーク化・モバイル化・双方向になった私たちの「思考・記憶をサポートするメディア」としてのコンピュータを、もっと有効に文化の理解に使うことはできないだろうか。本書はそのような素朴な疑問から出発して、カルチュラル・コンピューティングという分野、つまり無意識のうちに深く内属している感性・民族性・物語性といった文化の本質を情報化します。そして、ノンバーバル情報とバーバル情報に統合し、文化追体験や文化モデルの交換体験を、コンピュータで取り扱うという分野の可能性を提唱します。未来のコンピュータのコミュニケーション能力に欠かせないカルチュラル・コンピューティングでは、人間が歴史の中で培った各文化の中で行為や文法などの形で蓄えてきたものには文化に固有のまたは文化に共通の形式があると考え、その具体的な方法論といくつかの具体例を示すことにより読者をこの新しい領域に誘うことをめざしています。

男もすなる日記といふものを、女もしてみむとてするなり。

NTT出版から出した拙書「カルチュラルコンピューティング」ー文化・無意識・ソフトウェアの創造力ーをめぐる思索の場にします。
http://www.nttpub.co.jp/search/books/detail/100001995

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自己紹介
http://www.tosa.media.kyoto-u.ac.jp/

Hitch Haiku(コンピュータ支援俳句)を体験したい方は、
http://www.tosa.media.kyoto-u.ac.jp/HitchHaiku/RenkuLogin.html